三連休の初日14日(土)、新潟県が実施する在職者向け職業訓練で新潟テクノスクールに行ってきました。
受講した内容は初心者向けのコピーライティングで、その名も「書きたくて・・・夏。仕事で活かせるコピー講座-初心者向け」。
コピーライティング講座らしいネーミングですね。

会場の案内看板
講師は、新潟三越伊勢丹の「NIIGATA越品」キャンペーンのコンセプト設計・ネーミング・コピーライティングを手がけたコピーライター、横田 孝優(たかまさ)さん。
横田さんは、ブランディング視点のコピーライター事務所「ザツダン」の代表であり、第一線で活躍するプロのコピーライターさんです。
こんなすごい方のお話が聞けるのに、受講料は2,400円。
県が実施してくれるプログラムだけあって安心価格。
このチャンスに聞かなきゃ損だ!と思って参加を決めました。
講座の進み方
開講時間は午前9時〜午後1時。
受講者の座席はあらかじめ指定されており、4人または5人で1つの班が構成されていました。
はじめの1時間で、「コピーとは何か」「良いコピーとは」といったコピーのルールを教えていただき、その後は実際にキャッチコピー・ボディコピーを考えるというワーク形式。

コピーづくりのコツが詰まった配布資料
※キャッチコピー、ボディコピーについては下記記事が分かりやすかったです。
(いずれも外部サイトに飛びます)
ワークでは、まずは自分でコピーを考えます。
その後、班のメンバー同士で発表・話し合い、班としての案(班内のベストコピー)を決め、それを発表するというやり方。
同じ班の方はもちろん、他の班のコピーやそこに至るまでの思考プロセスが聞けて非常に有意義でした。
皆が考えている間、横田さんは各テーブルを回りながら様子を見たり、完成しているようなら実際に見てアドバイスをくれたりしました。
各班にベストコピーを発表させた後は、どのコピーが最も良かったか、このコピーは●●だから〇〇するとよかった、などと講評してくれました。
一部の課題では、何と横田さんが作った模範案を示してくれたのですが、それが流石のひと言(後述)。
自分のコピーを作るのに15分、班のベストコピーをまとめるのに15分、と課題の内容に対して考える時間が短く、非常に難しかったです。
私をはじめ、時間内に終わらない参加者がけっこういたのですが、それに対する横田さんの言葉に重みがありました。
「〆切は厳守ですからねー」
そりゃそうですよね。
「まだ出来てないからちょっと待ってください」なんてクライアントに言えません。
最低限、まずは決められた期限内に提出すること。
そしてその中で良いコピーを作らなければいけない。
プロのコピーライターの厳しさが詰まったひと言でした。
講座を受けた感想
結論から言うと、課題はハードでしたが、その分とても勉強になりました。
コツを聞き、手を動かして、講評を聞く、この流れのおかげでただの座学よりも理解が深くなったと思います。
それではここから講座の復習を書いていきます。
コピー=価値を生む言葉
コピーライターはコピーを書いて対価をいただくので、いただく対価に見合う価値(クライアントが得すること)を提供しなければいけません。
クライアントが得する=売上が上がること。
その上がった売上の中から対価をいただくという感覚だと仰っていました。
良いコピーは3種類
1.約束がある。
AKB48「会いに行けるアイドル」
アイドルは本来遠い存在で会うなんてありえなかった。
そんなアイドルに会えますよ、とお客さんに約束をしている。
2.提案がある。
- ブラックサンダー「一目で義理と分かるチョコ」
- ゴディバ「日本は義理チョコをやめよう」
それぞれどんなチョコかはご存知かと思います。
両社とも「自社のポジション」をよく把握していて、それを落とし込んだコピーです。
3.「うれしい」がある。
これは横田さんが講座中に何度も強調されていたことです。
× どう「すごい」か ←伝えたい側の目線
○ どう「うれしい」か ←受け取る側の目線
【JRの「そうだ 京都、行こう」キャンペーン】
東京ー京都間を2時間20分で結ぶ新幹線
→どう「すごい」か
そうだ 京都、行こう。
→パッと京都に行ける(どう「うれしい」か)
何度も見返している「プロフェッショナル 仕事の流儀」でグリコのマーケター・小林さんも同じようなことを仰っていました。
「あ!私のあの時に、あのシーンでこのお菓子ピッタリかも」と2、3秒間で思わせる、思っていただけることが大事で、何らかのシーンに合うなって思わないと絶対お客さまに手を出していただけない
こう(具材を半生に)すると何がいいんだっけ?
じゃあお客さんにとって何が嬉しいの?
非常に面白い回で思わずブログにも↓

【課題1】好きな作品を紹介するキャッチコピー・ボディコピー
キャッチコピーは20文字以下、ボディコピーは150〜200文字という条件で、映画でも小説でも好きな作品のコピーを考えるという課題。
私はTBSドラマ「空飛ぶ広報室」を題材に選びました。
(空飛ぶ広報室の感想を書いたブログはこちら↓)

キャッチコピーを「理想と違う現実にも良いことはある」と決めてボディコピーを書き始めた頃、横田さんからのお言葉。
「ボディコピーはあらすじじゃないですよ!」
「あらすじっていうのは、どう『すごい』か ですからね」
「これも良いコピー(約束・提案・うれしい)と考え方は同じですよ」
私は完全にあらすじを書いてしまっており、結局書けずにタイムアップ。
【課題2】架空の商品(ドーナツ)のキャッチコピー
- 新潟のドーナツ店が作った、新潟の米粉100%ドーナツ「こめわ」
- 卵、小麦粉、砂糖不使用
- 味はプレーン、ミルク、イチゴ、抹茶、きなこ
- 油で揚げていない
この商品について、良いコピーの3つの観点(約束・提案・うれしい)から1つずつ(合計3つ)キャッチコピーを作りましょうという課題です。
まずは自分の案を作り、その後班ごとに班としてのベストコピーを発表しました。
卵・小麦粉不使用という特徴に注目し「アレルギーの人でも食べられます」というメッセージを込めて「あなた」「あの子」という言葉を入れてコピーを作成したチームがありました。
私もアレルギーの人をターゲットにしたコピーを考えていたので、良いコピーだなと思っていたのですが、講評では「あなた・あの子 だけでは、読み手(受け取った人)がそれぞれに想像してしまうので、アレルギーの人を指しているということが伝わる工夫が必要ですね」とのこと。
講師・横田さんの模範解答
この課題では横田さんが作ったコピーも見せていただきました。
約束・提案・うれしさの3観点それぞれから作ったものがこちら。
- 「米粉、見直したぜ。」
米粉を使ったものは美味しくないというイメージを持つ人が多いので、このドーナツは米粉だけど美味しいですよという約束を込めたコピーです。 - 「人生最初のドーナツに選んでほしい」
親は子供に初めて食べさせるものに気を使いますよね。素材にこだわったこのドーナツをそんな瞬間に食べてほしいという提案がこもったコピー。 - 「日月火水木金ドーナツ まいにち、こめわ。」
油で揚げていないので毎日でも食べられるといううれしさを、土曜日とドーナツをかけたダジャレで表現。先生曰く「ダジャレは逃げじゃなく、立派な強い味方です」とのこと。
参加者は皆「おぉ〜」と声を上げていました。
コピー制作の流れ
2つの課題が終わったところで、再度横田さんからの説明。
コピー制作ではいきなりコピーを考え始めるのではなく、下記の手順に沿って進めるのが良い。
- 情報収集
- 強みの分析とターゲット設定
- コンセプト設計「誰に何を言うか」
- コピー制作
情報収集
まずは知る・調べるを地道にやる。
- 商品・サービスの特徴、ストーリー
- 提供する企業・お店のこと
強みの分析とターゲット設定
- 競合について、市場について → 商品・サービスの強み
- 想定されるターゲットの生活・心理 → ターゲットのニーズ
コンセプト設計「誰に何を言うか」
課題2では、食物アレルギーを持つお母さんに、皆で食べられるドーナツがありますよと伝える。
【課題3】タワーレコードのキャッチコピー「NO MUSIC, NO LIFE.」に続くボディコピーを考える
あまりにも有名なタワーレコードのキャッチコピー「NO MUSIC, NO LIFE.」。
実際にはきちんとボディコピーが存在していますが、あなたが書くとしたら何を書きますかという課題です。
私が書いたのは下記の通り。
音楽は何のためにあると思いますか?単なる暇つぶし・持て余した時間を埋めるだけでしょうか?
私たちは、「人生を楽しむ相棒」だと考えます。
喜びの瞬間を忘れがたいものにしてくれたり、誰かにぶつけたい怒りを受け止めたり、抱えきれない哀しみに寄り添ってくれたり、楽しい気持ちをさらに盛り上げてくれたり。
あなたにピッタリな相棒は、きっとあなたの生活を豊かにします。
音楽があれば、悲しいことは半分に、嬉しいことは何倍にも。
あなたが最高の相棒に出会えますように。
3つ目の課題にして初めてちゃんと書き上げられました。
ちょうど横田さんが回ってきたのですが、「全体の流れはキレイに出来ていますね」と褒めていただいた上で、もっと良くするためのアドバイスをくださいました(赤色アンダーライン部分)。
- 相棒
相棒は1人だけのイメージ。曲は悲しい時に聞きたい曲、嬉しい時に聞きたい曲などシーンによって多種多様なので、相棒という言葉は選び直した方が良い。
→「仲間」という表現に変えました。 - 喜びの瞬間を忘れがたいものに…(以下略)
平易すぎてありきたりな印象。しかも文が長い。こんなに長く書くのなら、変わった表現を用いて「おっ、これは他のものと違うな」と思わせる工夫が必要。
→「一緒に騒いでくれたり、そっと涙を拭いてくれたり」と音楽を擬人化してみました。
ボディコピーの基本の型
課題3でボディコピー作成に入る前に、基本の型を教わりました。
- ターゲットに問題提起をする
「〜したらどうですか?」「どう思いますか?」 - それに対する発信側の考え方を述べる
「タワーレコードはこう考えます。」今回の課題で言えばキャッチコピーから想像する。 - 約束・提案・うれしさを提示する
- 締める
あくまでこれは基本形といっていましたが、茶道の心得である「守破離」のように、まずは基本をしっかり守ることからスタートです。
【課題4】新潟の枝豆を県外に売り出すためのキャッチコピー・ボディコピー
充実した講座もいよいよ最後の課題。
これもまず15分間で自分の案を作り、その後15分で班のベストコピーを決める方式。
始める前に横田さんからポイントがいくつか提示されました。
- 「県外」といってもたくさんあるので、まずはターゲットの絞り込みから行う。
- 良いコピー(約束・提案・うれしい)の考え方は忘れない。
- 新潟県の枝豆作付面積はNo.1だけど、収穫量・出荷量はNo.1ではない。
→新潟の人が思うほど、世間は「新潟=枝豆」のイメージは持っていない
方言を入れたコピーを作る班が多かったのですが、横田さんの反応はあまり良くありませんでした。
- 「田舎だなぁ」と強く印象付けてしまう
- どの地方都市も移住者を増やそうとしたり色々頑張っている中で、あまり田舎イメージが付きすぎるのはイメージダウンになる
ということで、田舎というイメージを付けずに地方の良さを伝えることが大切だそうです。
ボディコピーは講評する時間がなく省いたのですが、全体的な印象としては、「うれしい」まで到達している班がなかったとのこと。
作付面積No.1というすごい事実はあるが、それが他県の人にとってどううれしいのか?を掘り下げて欲しかったというコメントでした。
横田さんの模範解答はなかったのですが、
- 「枝豆ってお父さんだけのものですか?」
- 「コピー考えるとき、枝豆の後ろにビールが見えちゃって(想像して)ませんか?」
- 「枝豆はお父さん目線のコピーが多い。ネーミングも『~姫』などが多いし」
- 「新潟だと枝豆ってビールのお供というだけじゃなくて、家族全員で取り合いながら食べるものですよね」
と問いかけられ、参加者は大きく頷いていました。
ちなみにもし横田さんが作るとしたら、方向性として「枝豆=お父さん」という固定観念からは脱却したものを作りたいと仰っていました。
まとめ
講師の横田さん、同じ班の人、他の班の人で「おぉ~!」というコピーを考える人に共通しているなと思ったのは、なぜそうしたのか?ということを論理的に答えられる(きちんと設計している)ということです。
良いコピー作成の手順である、
- 情報収集
- 強みの分析とターゲット設定
- コンセプト設計「誰に何を言うか」
- コピー制作
というステップをきちんと踏んでいるということですね。
分かりやすいコピー、かっこいい(クスッと笑える)けどそれだけじゃなくてちゃんと響くコピーは、思いつきでパッと出るわけじゃなく、こうした裏方の地道な作業の集大成なんだなと再確認しました。
また、どう「すごい」のか(事実)をただ述べるのではなく、それがお客さんにとってどう「うれしい」のか(その商品を通じてどんな良い体験が得られるのか)に変換するのを忘れてはいけないということ。
非常に学びの多い、刺激的な4時間でした。
終了後はこんなものをいただけました。

セミナー受講証明書
今回は初級編ということでキャッチコピーがメインでしたが、来月8月25日(土)にはボディコピーやネーミングが中心の中級編が開講される予定とのこと。
案内チラシによると「個人別の添削によって個々の課題を把握して、技術の確実な習得に繋げる」ということなので、班の代表案に対する講評中心だった今回とは違って、もっと個人を見てくれるということでしょうか。
今回も十分難しかったので、中級編は楽しみでもあり恐ろしくもあります(笑)
それでも、掴みかけたノウハウを定着させるために参加してこようと思います。